Medical Student Blog Series:アメリカでの医学生生活

JMSA medical student blog series

9-5-2011
鈴木 まり
出身地:ニューヨーク州
現在、ワシントン市(Washington DC)のジョージ・ワシントン大学医科大学院(George Washington University School of Medicine)の三年生

ジョージ・ワシントン(GW)大学医科大学院について

私の学んでいる学校はワシントン市のど真ん中にあり、ホワイト・ハウスから約一キロのところにあります。

そのため、GW大学の病院ではアメリカの大統領、副大統領ならびにホワイト・ハウス関係者の医療機関として指定されています。レーガン大統領の暗殺未遂事件のとき彼が担ぎこまれた病院がGW大学の病院だったため、それ以来、その事件とともに名が知られています。そのほかにも、GW大学は、国際保健衛生(International Health)の学問や活動でも評価されています。


インターネットを通しての医学教育: Web-Initiative-In-Surgical-Education (WISE MD)

アメリカでは、4年間の大学教育を終え、さらに4年間の医学部教育を受けるために、医科大学院(米国流の医学部)にはいります。医学生として、私は、一年目の夏休みに時間的に余裕があり、医学部での選択科目に医学教育を選びましたので、夏休み中にこの専門についての知識を高めるために、ニューヨーク大学(NYU)医学部で取り組んでいるインターネットを通しての医学部外科医療研修プログラム、WISE MD(ワイズMD)の開発プロジェクトに参加しました。

WISE MD(ワイズMD)について

正式名称を“Web Initiative in Surgical Education”といい、医学生の手術技術の向上をはかるためにNYUの大学病院で活躍している外科の先生たちが、1990年代に始めたものです。個人からの寄付を もとに、ビデオ・スタッフ、コンピュータ・プログラマー、グラフィック・デザイナーを含めるチームから成り立っている。

アメリカの医学部は三年目は六つの専門で経験をつむことになる。その一つは手術。学校により期間は8週間から12週間だが、外科の先生の立場から見れば、いつも同じ経験を与えられるわけではない。ましてや、手術室に初めてくる医学生が同じ経験と知識を持っつているわけではない。そこであらかじめ外科の先生が手術のあらすじをビデオにおさめて解説をつけ、インターネットを通じて医学生に公開する。

手術は多く見られるものを中心に先ずは診察のビデオからはじまる。(下のイメージが見本の一部。)


手術のビデオのほかに解剖模型(anatomy)(下)の復習、検査の結果を復習させて医学生を手術室で準備させる。

経験

私の10週間の経験は外科の先生たちの仕事ぶりをみて、WISE MDの開発チームの作品を試し、WISE MDの医学生の学習度合いを試験して、その採点をし、あっというまに終わってしまった。

WISE MDのスタッフは医学教育に対する関心が高い人たちなので、カナダから教育学の専門家もまねいて現在のWISE MDの医学生の医学知識に対する影響を国境をこえて調査してもらった。

個人的に、私にとってWISE MDの経験は掛け替えのない出会いだと思う。WISE MDの開発に係わっている先生達、主に私の二人の上司 -内科の先生と外科の先生 は「カリスマ」的存在だった。お互いに個性を生かし、医学教育の枠をひろげている。

医療現場への貢献

WISE MDの開発に関わる外科の先生のなかには、国境無き医師団(Medicins Sans Frontiersのメンバーもいる。後進国での現場では医師あるいは豊富な医学教育が少ないため、現在、後進国へインターネットあるいはビデオ、CD などでWISE MD を送り込もうとしている。

医学教育への貢献

WISE MDの試みはNational Institutes of Health (NIH)にも評価され、医学知識を高める効果を調べるよう三年間の研究資金(グラント)を与えられている。

さらに、WISE MDが開発したビデオ・レクチャーは米国の各大学医学部で利用効果があるように開発も進めている。米国外科医師教育学会American College of Surgeons (ACS)と米国外科学教育協会Association for Surgical Education (ASE)の両学会と共催でも開発が進められている。

このブログを作成するに当たり、本庄財団とJMSA理事である顧問の方々から多大のご協力を賜り感謝いたします。