Frequently asked questions about COVID-19

Written by: Yuzuru Anzai, M.D.

Dr. Anzai is a past president of JMSA. He is an attending at Lenox Hill Hospital and President, New York Midtown OBGYN

何故新型コロナウイルスの感染症(COVID-19)の治療に人工呼吸器が重要なのか?

クオモ知事の毎日の記者会見で、必ずでてくるのがVentilator (人工呼吸器)です。とにかく、必要な数を確保しなければいけないという事がくりかえし強調されます。なぜ、この病気にはこの医療機器がそれほど重要なのでしょうか?

肺と言うのはご存知の通り、血液に酸素を供給し二酸化炭素を除去するガス交換の役目を担っていますが、これは肺の末端の小さな袋である肺胞で起こります。新型コロナウイルスの感染によって、ここに炎症が起きると、このガス交換がうまくいかなくなります。重症になるとAcute Respiratory Distress Syndrome (ARDS, 急性呼吸窮迫症候群)と言う呼吸不全に陥り、全身の低酸素状態を起こし、多くの臓器に障害が起こります。この場合、容態が急速に悪化する事があるので、挿管といって気管内にチューブを挿入して、人工呼吸器で呼吸管理を行い、高い圧力で高濃度の酸素を送り込むことになります。COVID の場合、状態が急変する事があるので、ある程度早めの挿管が勧められています。    

   人工呼吸器を使用している患者さんですが、通常の肺炎の場合は、抗生物質等で感染を治療し、炎症が収まったところで、人工呼吸器から離脱します。ところがCOVIDの場合、今の所は有効な治療方法がありませんので、人工呼吸器でライフサポートをしながら炎症が自然に良くなるのを待つしかありません。このため、人工呼吸器の使用が長くなる傾向がありますが、残念ながら、多くの人の場合、これでも状態は軽快せず、現在のイギリス(INARC report on COVID-19 in critical care April 4 2020―おそらく一番数が多い報告)、アメリカのデータでは、2/3が亡くなっています。あとの1/3も治療継続中の人を含みますから、Ventilatorが必要となった患者さんの実際の死亡率は、これよりも高くなる可能性大です。COVID-19 の治療にVentilator は不可欠なのですが、これだけでは充分ではなく、どうしても感染自体を治療する方法が必要となります。

COVID-19 の致死率は?

世界的には6%弱、アメリカが3%ぐらい、イタリアは13%、低いドイツは2%以下、日本は2%ちょっとですが、もちろんこれは、いろいろなファクターによって変わります。一番よく言われるのは、検査数で、積極的に検査をして、母集団の数が大きければ、低くなり、検査を絞っていれば、高くなります。もちろん、それだけではなく、ドイツでは感染者が若者中心であったことが致死率の低さの一因と言われており、対照的にイタリアは高齢者の罹患が多かったそうです。また、実際の死亡者数も、自宅で、コロナ感染の診断がついていなかった人は、入っていなかったりで、イタリアの実際の死亡者数は、もっと多かったのではないかと最近のWall Street Journal に書いてありました。(中国、武漢も同様と言われています。)もちろん、医療機関が対応できる以上の患者数になると死亡者数も増えるので、それを防ぐためにアメリカは、必死になっているわけですが、ここ数日ようやく成果が出てきているようです。日本は患者数が増えてきていますが、死亡率は低いままです。これは、若い人を中心に感染者が増えているからかもしれません。

新型コロナウイルスのの血液抗体検査が可能であれば、多くの人を対象に施行し、実際にどれだけ感染が広がっていたのかを把握することができます。そうすれば、正確な死亡率を割り出すことができ、もっと低くなるかもしれません。(症状のなかった人も含まれ、母集団が大きくなるので)。抗体がある人は、免疫がある可能性があるので、再感染しにくいかどうかも注目されます。

中国等で、この検査が使用されているのを見た事があるのですが、数日前に、アメリカで抗体検査が認可されたと報道されました。実はこれは正確ではないようで、正式の認可はまだの様です。FDA は血液検査のみで、診断をつけたり、除外するのは進めない、また、他のコロナウイルスの抗体(他のコロナウイルスは、普通の風邪の原因となるよくあるウイルスです。)との交叉反応があるので、抗体が必ずしも、新型コロナウイルスの感染があった事を意味しないとの姿勢を取っているとのことでした。

マスクの有効性は?

アメリカCDC は、4月4日付で、一転して一般の人にマスクの着用をするようにという勧告を出しました。ただ、医療品のマスクの不足の折から、とにかく、顔を覆うようにと言う事です、バンダナでも良いし、手製のマスクの作り方まで、丁寧に書いてあります。

これまで、マスクは、感染している人が他のひとにうつさないようにするのには有効であるけれど、健康な人が感染予防に使うのには意味がないと言われてきました。感染者が咳をした時に、飛沫が飛ばないようにという効果はあるけれど、空気中に浮いているウイルスは、マスクの目よりもずっと小さいので、それを防ぐ効果はないと。これについてはやはり見解は変わっていないと思います。ただ、あまりに感染者が増えた事、50%の感染者は無症状であった(CNN, Iceland からのデータ) 、とにかく一人一人が、皆感染しているというつもりで行動した方が良い、従って、皆マスクをすれば、感染のリスクが減るという事でしょう。

マスクの有効性には科学的な証拠もあり、4月4日付のNature Medicine にLeung 博士のグループが、Surgical Mask が、患者の吐いた息の中に含まれるcoronavirusをブロックしたと報告しています。これに対して、4月6日のAnnals of Internal Medicine にはSurgical Maskを新型コロナウイルスの患者に着用させて、咳をさせた場合、マスクの外側にもウイルスが検出された、要するにマスクを通ってしまうという結果をBae 博士のグループがレポートしています。ただ、例えば、ウイルスが遠くまで届かなくなるかもしれないし、感染予防の効果がないとは結論できないと書いてありましたが。

正直にいうと、私はマスクが嫌いです。しかしながら、新型コロナウイルスの大流行の中で、マスクをするのは、社会の一員としての責任だと思います。自分のためではなく、他の人たちを守るためにです。

ペットからうつるか?

4月6日に、ブロンクスの動物園の虎が新型コロナウイルスに感染している事が分かったと報道されました。そこから、犬や猫から感染するかどうかという記事がニューヨークタイムズに載っていました。実は猫にウイルスを吸入させた実験があるらしいのですが、猫は肺炎を起こさなかったそうです。ところが、中国からの最新の報告によると、イタチ、猫では、SARS-CoV-2 の感染を実験的に起こすことが可能で、犬には感染しにくく、鶏、豚、アヒルには感染が認められなかったと言う事です(Shi 他、Sciennce 4/8/2020)。新型コロナウイルスによく似ているSARSは、コウモリから、chive という動物を(chive cat というらしいのですが、猫ではないそうです。)介して人間に移ったという話を聞いた事がありますが、この動物は食材だそうなので、ペットとは違います。今の所、ペットからうつる可能性は低いけれど、まあ気をつけなさいという記事のトーンでした(ペットがSocial distance を理解できるとは思えませんが)。虎がどうしてかかったのかも不思議ですが、それについては言及されていませんでした。