レポート: 金沢大学医学生と研修医オブザーバーシッププログラム

*このプログラムは8月21日から8月25日まで実施されました。

ディレクターAndrew Schneider さんからのメッセージ:

私はニューヨーク市出身のAndrew Schneiderです。私は 2010 年から金沢大学医学部で医療 ESL と Cross-Cultural Communication を教えており、2012 年からは医学生とレジデントの選ばれたグループを対象に 2 週間のニューヨーク留学プログラムを実施しています。需要は非常に高く、選考プロセスは容易ではありません。私が参加者に最も求めているのは、モチベーション、成熟度、そして自信です。

私たちは、2014 年 3 月以来、JMSA と協力できることを大変光栄に思っています。

私は JMSA のことを偶然知りましたが、私たちのグループは米国に在住し働いている日本人医師たちと会えることを望んで連絡をしました。そして、それは医学生に海外の勉強やキャリアについてユニークな視点を学べると感じました。イワハラ先生、アンザイ先生、ラマニ先生は私たちを食事に招待し、私たちはすぐに歓迎されていると感じました。その時は、私たちがグループのために毎年恒例のシャドーイング プログラムを開発し、それがほぼ 10 年も続くことになるとは、まったくわかりませんでした。毎年非常に多くのJMSA会員が私たちを歓迎してくれています。それはニューヨークでの2週間の研究のハイライトです。このことに私たちは永遠に感謝し続けます。 JMSAの皆様、ありがとうございました!

山室優介さんのコメント:

私はこの夏、ニューヨークで2週間の研修プログラムに参加させていただきました。そのプログラムの一環として、米国日本人医師会(Japanese Medical Society of America, JMSA)に所属されている加納麻紀先生のクリニック(東京海上記念診療所)を見学させていただく機会をいただきました。そこでの経験について記載します。

私はこの2週間の研修プログラムの中の2日間、Hartsdaleにある東京海上記念診療所(Japanese Medical Practice)を見学させていただきました。その診療所には、ニューヨーク州のHarrisonやGreenwichに在住する日本人が多く来院していました。加納先生は小児科医の先生である為、来院する多くの患者さんは、小児のワクチン接種やwalk inでの診察目的の人が多い印象でした。ここで、アメリカでの小児のワクチン接種は、州ごとに義務付けられるワクチンが異なるということを加納先生に教えていただきました。その為、他の州から引っ越してきた子供は、その州で必須であるワクチンを接種していない場合もあるため、引っ越し先の学校から指摘され、接種に来られる方が多いそうです。また、医療においてアメリカが日本と大きく異なる点として、健康保険の仕組みがあり、患者さんに対して行う検査についても、患者ごとに健康保険の会社に問い合わせ、その検査が保険の適用範囲かを確認する必要があるそうです。先生が保険会社に確認するという光景は、日本では見られないため勉強になりました。

加納先生の臨床の場を実際に見学させていただいたことで、診察スタイルや患者さんとのコミュニケーションのとり方について、日本との違いを感じました。まず、日本では、通常、医師のいる診察室に患者さんが私服で入室するスタイルですが、アメリカではガウンを着た患者さんがすでに診察室で待機しており、そこに医師が入室するというスタイルでした。また、加納先生はいきなり電子カルテを記入し始めるのではなく、患者さんと正面を向いて挨拶から始め、十分なコミュニケーションをとり、必要に応じて電子カルテに記入していました。その為、診察が終わった後に医師の待機室に戻り、そこの電子カルテで診察についてまとめ、処方箋や文書の作成などをしていました。患者とのアイコンタクトをしっかりと取りながら診察をし、十分なコミュニケーションを優先することの重要さを感じ、学ぶことができました。加納先生の診察を見学させていただいた中で一番印象的であったのが、先生が患者さんに説明をする上で、疾患名などを日本語でも伝えていたことでした。それは、加納先生は3歳の頃からアメリカで育ち、医学校もアメリカで卒業されたというキャリアを伺っていたからです。そのため、どのようにして日本語を勉強し日本語の医療用語を習得したのか先生に質問したところ、先生は「診療所の皆さんが日本語で話すので、それで覚えてきました」とおっしゃっていました。その話を聞いて、私は先生の日本語で医療用語を覚える姿勢そしてその努力に感銘を受けました。

見学の間、その他にも、アメリカでの医学校の入試システムや学生のキャリアについても聞かせていただきました。日本とは違い、学士を取得して初めて医学校を受験することができ、その為にはMCATという試験や大学でのGPA、推薦状、小論文などが受験の要件としてあるそうです。また、学士を取得してから医学校を受験するまでの期間の学生の過ごし方は多種多様で、皆さん色々な経緯を経て医学校を受験するそうです。この話を伺って、日本より医師になるまでの道のりは難しいのだなと感じたことと、多種多様な方々と医学校で関わることのできる環境に魅力を感じました。

加納先生のみならず、その他の診療所のスタッフの皆さんもとても明るく気さくな方が多く、あっという間の有意義で楽しい2日間でした。今回の見学で学んだことは、とても貴重な経験となりました。今後はこの経験も活かし、また努力していこうと思います。今回はお忙しい中、見学させてくださり誠にありがとうございました。

原口葵さんのコメント:

今回、2週間の研修プログラムの中で、JMSAの先生方のいらっしゃる病院を見学させていただく機会をいただきました。

海外の病院を見学する機会は初めてで、新しい発見がたくさんありました。日本とアメリカでは、病院の分化も違います。些細な部分でも日本との違いを感じ、驚きの連続でした。

保険制度が日本とは違い、できることが限られる中、先生方が、患者さんの金銭的負担にならない範囲で患者さんの健康について考え、できることを提案していく姿に感動しました。

患者さんの訴えに任せるだけでなく、相手に必要なものを考えていくことを自分もできるようになりたいと感じました。

また、短い診察時間の中で、患者さんの日常の様子も聞き、困っていることが無いか耳を傾ける姿勢は、日本では見ることの少ない光景でした。

患者さんの健康の訴えの他に、日常生活での困りごと、ストレスについてもしっかりと聞いていくことが患者さんとの信頼関係を気づくことにつながるのだと感じました。

今回の病院見学は2日間という短い時間でしたが、先生方や院内スタッフの方にお心遣いをいただき、とても楽しい2日間でした。この夏学んだことを将来の糧として、勉強に励んでいきたいと思います。

石井裕子さんのコメント:

今回のNYC滞在中に、金原先生のクリニックとRebarber先生のクリニックにお伺いしました。ともに日本での臨床実習ではできないような貴重な経験となりました。

まず金原先生のBronxにあるクリニックではスタッフと患者の約半分がLGBTQの方々であり、またスペイン語を日常生活に使用している人が非常に多いことに衝撃を受けました。最初は彼らの中には自分のコミュニティに閉じこもっている人が多いのではないかと勝手に想像していました。しかし実際にお話ししてみると、皆さんとても親切でよくコミュニケーションをとり、お互いを尊重しているようでした。ニューヨークでは200を超える言語が話され、数えきれないほどのsexual identityの種類がありますが、お互いがお互いを認め合い、まさに十人十色という言葉がふさわしい街であるように感じました。このようなことを実感できたのもニューヨークでshadowingができたからだと思います。

またRebarber先生のクリニックはエコー専門の産婦人科クリニックで、日本ではエコーだけを行うクリニックは聞いたことがなかったためこちらも新鮮でした。さらにこちらのクリニックでは二人の女性医師が私の指導にあたって下さりました。金原先生含め第一線でご活躍されクリニックの中で大きな役割を任せられている女性の先生とお話しすることができたこともまた収穫になりました。

実習期間は三日間と短いものでしたが、文化の違い、医療システムの違い、言語の違い、人種の違い、そして日本人としてニューヨークで働くという観点から様々なことを感じ、考えさせられた濃密な三日間でした。お忙しいところ本当にありがとうございました。

Yoka Hironaさんのコメント:

ニューヨークで活躍されている日本人の先生の元でシャドーイングする機会をいただき
ました。1、2日目は消化器内科の岩原先生、3日目は眼科の遊馬先生の元でお世話になり
ました。温かく迎えてくださり、日本の診療と違う点などを詳しく教えてくださいました
。岩原先生の奥様のみちこさんからはアメリカの保険制度や日常生活での文化の違いを教
えて頂きました。内視鏡センターにも伺ったのですが、深く鎮静するためそれぞれの部屋
に麻酔科医がいるなど日本と異なる点が多く興味深かったです。3日間総じて、患者さん
が心地良くいられること、苦痛を感じないことが重視されている印象を受けました。また
、英語での診療を実際に見て、先生がどのような表現を使われているかなど大変勉強にな
りました。英語でも日本語でも診療を行うことができる先生方は現地の患者さんに頼りに
されており、とても刺激を受けました。今回はこのような貴重な機会をくださり、誠にあ
りがとうございました。今後の診療に生かしていきたいと思います。

二木あずみ先生のコメント:

JMSAの皆さん、日本から訪れた私たちに見学の機会をくださり、どうも有難うございました。私はブロンクスの南に位置する金原先生のクリニックと、マンハッタンにある安西先生のオフィス、それぞれ見学する機会を得ました。健康保険など、日本とアメリカでの医療の違いを見ることができました。いくつか、日本との違いの点で素晴らしいと感じたことがあります。オンライン診療は日本にはなく、その現場を体感するのはとても新しく驚きでした。先生方やクリニックのスタッフの皆さんはとても優しく患者さんの治療に協力的な様子が伺えました。金原先生は、患者さんにスペイン語でも話をされ、やり取りが難しいと感じた時は院内にある電話から翻訳のサービスを呼んで、電話越しに通訳の方がスペイン語と英語を翻訳していました。また、日本で私が経験したことがないAIDSの患者さんや、性的活動について日本ほどハードルなく聞いていること、など日本との違いはいくつかありましたが、患者さんが病気に苦しんだり、家族の死に悲しんだり、病気と付き合っていく様子は、日本とアメリカで違いはないことが知らされました。さらに、心不全や糖尿病、高血圧などの疾患も全世界共通だということがわかりました。今回、アメリカで医者として生きることがどういうことかを見学して、女性ドクターの数が多いことも驚きました。日本の医師はまだまだ男社会で、私が日本で働いていると、「看護師さん」と呼びかけられます。日本では、「医者は男である」が典型ですが、アメリカではそうでないのだとよくわかりました。世界的な視野を持って多様性に生きる人々に健康を届けられているJMSAの先生方のように、将来こちらで働いてみたいという夢もできました。どうもありがとうございました。

金沢大学附属病院研修医
二木あずみ